鳥取夜景
画家 藤田美希子さんが鳥取各地を巡りながら描いた7つの夜景。そのひとつひとつにコピーライターwakrucaさんが物語をつけて一冊の本が生まれました。今回はその本の中を歩くように絵と物語を体感できる空間を作ります。現実と空想を行き来するような不思議な世界をお楽しみください。
2023/01/23 レポート
今回の鳥取夜景の空間づくりは「物語の森」をテーマにして進められました。まず会場の奥に森を作るために本物の森に入り、そこで切った木を軽トラで運びました。7~8メートルはある杉の木から小さな枝まで軽トラ2台分の木を会場に入れ、木材の土台に針金でくくりつけて木のオブジェのようなものを10個ほど作り森を作成。その中央に机とランプを置いてそこで「鳥取夜景」の本が読めるようにしました。
会場に入ったすぐの壁には実際に描かれた原画と大きく拡大された物語のページが並び、本当に自分が本の中に入ってその中を歩いているような空間をつくりました。一ページ、一ページをじっくり読み進んでいくうちに本物の森にたどり着く。本の世界に入り込むほどに森の奥く分け入っていくような感覚を具現化した空間作品です。
期間中、たくさんのお客さまがこの森に来られました。じっくりと時間をかけて絵と物語の世界を読み進める方。森の中の机に座って静かに本を読む方。長椅子のベンチに座って室内の風景を眺める方。日を改めて再びこの森を訪れてくださる方。おひとりおひとりがそれそれの楽しみ方でこの森の中の時間を過ごしていらっしゃるようでした。
期間中には刺繍造形アーティストのみたにさやかさんに参加していただき朗読会を開催。こちらもたくさんの方にご参加いただき、みなさんで物語の世界を共有し素晴らしい時間を過ごすことができました。また今回の芸術祭に合わせて部数限定で製作した「鳥取夜景」の本もたくさんの方にご購入いただき、同時に絵と物語に高い評価をいただいて大変うれしく思っています。
あの森はもうなくなってしまいましたが、森を旅したそれぞれの心の中に鳥取の美しい風景とその物語がいつまでも残っているといいと思います。
この作品をつくるにあたり協力してくださった鹿野町のみなさん、そして会場にお越しいただいたすべての方に深く感謝します。ありがとうございました。
文章:wakruca/写真:青木幸太