Twilight

雨に濡れる樹々。みずみずしい新緑が映り込む水面。色鮮やかなリバーサルフィルムをスライドで映し出しながら、現れては消えていく鹿野の原風景。ひとつひとつの景色を眺めるうちに、まるで初めて来た土地を旅しているような感覚になっていく抒情性あふれる作品となっています。


Twilight:開催レポート

2023/01/23 レポート

今回の鹿野芸術祭が開催される直前に私の曽祖母が鹿野町出身の人間だったことが分かりました。私のライフワークとして進めているプロジェクトの中には自分のルーツを題材にしたものがあります。今回もそういった要素を含んだ作品になっていたことに気付かされました。近年、自身が鹿野町に通うきっかけになったのは鹿野芸術祭の存在が大きくあります。この地が私を引き寄せてくれたことは、偶然ではなく必然のような感覚が今はあります。自分のルーツのひとつとして、この場所との関わりが今後も続いていくと嬉しいです。

作品はリバーサルフィルムの投影により、この土地の静寂した様子を表現しました。鑑賞者に何かを要求することは一切ありませんが、私からひとつの想いがあります。それは、私の作品でもありながら、そのストーリーの中に入り込み、物語を作り、解釈するのは鑑賞者自身であり、それはあなたが主人公だということです。言い換えれば、浮き立ってきた感情こそがあなたの人生です。他人が自分を写し出す鏡のように、写真もそういった存在のひとつです。左右の視野がかさなり、そこに焦点を合わせると、意識の根底にあるものを探れるはずです。

また、展示のビジュアルに使用した写真は本編とは関係なく、ネガフィルムで撮り下ろしました。映画を作る過程で本編の映像とプロモーション・記録用のスチールで切り分けるような意図と一緒です。それは、この作品が写真であり映画でもあるからです。

最後に。土地は人を育て、また人は土地を育てます。変化する社会の中で多様な価値観や思想がありますが、私は、古き良きあの頃よりもまだ見ぬ明日の方がずっと面白いと、自分に言い聞かせています。作品を制作し、それを発表するという行為は、自分のアイデンティティを確立する役割を果たします。それと同時に、一向に満足出来ないことが続けられる大きな理由でもあります。終わりがなく、どこまでも続いていきます。今回は投影として展示をしたリバーサルフィルムを今度は別のカタチにして、またこの地に来たいです。

文章・写真:青木幸太

|主 催|鹿野芸術祭実行委員会、
西いなば工芸・アート村推進事業実行委員会
|共 催|鳥取県
|助 成|鳥取県
令和4年度文化庁文化芸術創造拠点形成事業
令和4年度鳥取県工芸・アート村推進事業
エネルギア文化・スポーツ財団
ごうぎん文化振興財団助成事業

文化庁ロゴ エネルギアロゴ

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